あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
それから、北ヶ瀬さんは本当に毎日私の部屋に通ってくれた。
だいたいお昼前にやってきては、私が左手だけで苦戦していることをすべて担ってくれる。
ご飯の準備から、着替えの手伝い、部屋の掃除、安静にしておかないといけない私の気分転換にとドライブまで連れて行ってくれた。
それから、夜のお風呂上がりのケアまですべて。
最初はパジャマですっぴん姿の自分を見られることへの羞恥心がたまらなかった。
「こ、これくらいは自分でやりますから!」
「でも左手だけではできないでしょう?」
「うっ。だ、だけど……こんな姿を北ヶ瀬さんに見られるのはちょっと、なんていうか」
「じゃああまり見ないようにしますね」
「そういうことではなく……!こんな見苦しい姿を北ヶ瀬さんに見せるのが申し訳ないんですよ!き、嫌われたくないですし!」
私は極力顔を逸らしながら、北ヶ瀬さんとスキンケアの奪い合いをする。
いくら私達の仲が親しくなってきたとはいえ、こんな無防備な姿を見られるのはさすがに恥ずかしかった。
辻村くんと付き合っていたとき、夜中に突然『今から会えない?』とメッセージをもらってすぐ、私は眼鏡とマスク姿で会いに行くと『次から化粧くらいしてきなよ』と冗談混じりに言われたことを思い出す。
あれから私はたとえどんな些細な外出でさえ、絶対にメイクをしてから外へ出るようになった。
「じゃあ和泉さんは、たとえば僕が骨折して何もできなくなって、ボサボサ頭で部屋着姿だったら嫌いになりますか?」
「な、なるわけないじゃないですか!北ヶ瀬さんにはお世話になりっぱなしだし、もしそうなったら私が毎日北ヶ瀬さんの家に通って一から十まで看病します!」
勢いよく顔を上げてそう言い切った私を見て、北ヶ瀬さんはなんだか愛おしいものを見るような笑顔を浮かべた。
「ふふっ、そっか。それは頼もしいな。……でも、僕も同じ気持ちです。僕も和泉さんを一から十まで看病したいんですよ」
「……っ!」