あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。





 そんなことを間近で言われてしまったら、もう断れない。

 一気に押し寄せてくる恥ずかしさやむず痒さを閉じ込めて、私はそっと口を開く。





 「な、夏樹……さん」

 「ふふっ、はい。これからよろしくお願いしますね、和泉さん?」



 初めて口にのせた彼の名前は、信じられないくらい熱くて、甘酸っぱかった。

 「(たかだか名前を呼ぶだけじゃない!なのにどうして私、こんなにドキドキしちゃってんのよ!)」


 自分でも分かってしまうほど顔が赤くなって、私は素早く左手でを顔を覆って隠した。




 ソファの上の、わずかな距離。

 北ヶ瀬さんはそっと私のその手を握って、潤んだ瞳でこちらを見つめる。






 ──……あぁ、やばい。

 そう思ったときには、もう遅かった。





 北ヶ瀬さんの顔が、少しずつ近づいてくる。

 そしてそのまま吸い寄せられるように、私の視界が彼の長いまつ毛でいっぱいになった。



 お互いの吐息が触れ合うほどの距離。

 心臓が壊れてしまいそうなほど鳴り響くなか、私は静かに目を瞑った。





 「(あぁ、私、北ヶ瀬さんと──……)」



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