あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
けれど、ふわりと香水の匂いが揺れた直後、北ヶ瀬さんの動きがピタリと止まった。
「──ごめんなさいっ」
ハッと我に返ったように、北ヶ瀬さんは勢いよく体を後ろに引いた。
「……っ」
いつもの余裕のある彼からは想像もつかないほど、顔を赤くして、ひどく狼狽えたような声で何度も謝った。
「あ、いや、その……謝らなくて、も」
あまりの急展開に、私の頭は完全にフリーズしていた。
北ヶ瀬さんはギュッと拳を握りしめて、自分自身に強く言い聞かせるように震える声で言った。
「僕達は、〝友達〟でしたね」と。
「あ……」
「本当に、ごめんなさい」
──友達。
北ヶ瀬さんの口から出てきたその言葉が、熱くなっていたリビングの空気を一瞬で冷たく切り裂いていく。