あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
 





 「明日から仕事始めですけど、無理はしないようにしてくださいね」

 「は、はい……!」

 「では、おやすみなさい」

 「おやすみなさい!今日まで本当に、お世話になりました!」




 それから私は、北ヶ瀬さんを見送ってそっと玄関のドアを閉める。

 彼が帰ってしまった私の部屋は、信じられないくらい静まり返っていた。



 ずっとうるさいのは、私の心臓の音だけ。

 お互いのくちびるが触れ合おうとしたあのとき、私は全然嫌じゃなかった。





 「(ううん。むしろ……もっと触れたいとさえ思っていた)」

 胸の奥から、静かに、けれど確かな熱を持って湧き上がってきた一つの答え。

 ……いいや、本当はもうずっと前から分かっていた。







 「(私、北ヶ瀬さんと友達以上の関係を望んでいるんだ──)」

 自分の中にある北ヶ瀬さんへの恋心を、これ以上ごまかすことなんてできなかった。




 あれだけ友達の関係を続けたいと思っていたのに。

 もうこれ以上恋人は作らない、だなんて豪語していたくせに。






 「どうしよう、北ヶ瀬さんのこと……好きになっちゃった」
 

 ──その瞬間だった。





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