あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「もちろんだよ。ばっちり聞いたからね」
「……へ?」
どうしようもないほど不穏な空気が漂っていたこの部屋に、突然里英と由希子の明るい声が響き渡った。
思わず目を開けると、そこには今にも泣いてしまいそうになるのをグッと堪えている私を他所に、盛大なハイタッチをしながら喜び合う二人がそこにいた。
「え、あ、え? 怒って、ないの……?」
「やだー!怒るわけないじゃん!」
「でも、さっき……」
「もう!だって和泉が自分の気持ちに全然素直にならないから、由希子と一芝居打ったみただけ!ほら、和泉って自分のことになるものすっごく頑固になるからさ!?」
里英がニヤニヤしながら私の肩を小突く。
由希子もいつもの呆気らかんとした笑顔に戻って、フゥと息を吐いた。
「よ、よかったぁ……。私、もうあと五秒遅かったら泣いてたよぉ!ヒヤヒヤしたんだから、もう!」
「いやいや、ヒヤヒヤしてたのはあたし達のほうだから!いつまでも北ヶ瀬さんとは友達だって言われたらどうしようって焦ってたんだからね!」
「だ、だって」
「ちなみにあたし、北ヶ瀬さんのこと狙ってるっていうのは全部嘘だから」
「嘘って……じゃあ、あのSNSの投稿は!?」
「あれは本当。まぁ、デートっていうか相談?みたいな?それに、ちょっと会ってみたかったいうのも本音かな!」
由希子はスッと自分のスマホを取り出して、慣れた手つきで画面を操作して私に見せてきた。
そこには格式高い筆文字で書かれたロゴと、艶やかな着物を纏ったモデルの写真がスライドする、誰もが知る老舗呉服店の美しいホームページが映し出されている。