あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
親友達のあたたかいその言葉が、私の心の一番奥にじんわりと染み込んでいく。
いつの間にか部屋を満たしていた北ヶ瀬さんの香水の匂いは、由希子と里英の纏うフローラルな香りに混ざって薄れていた。
北ヶ瀬さんに恋心を抱いてしまったことへの戸惑いも、一人で生きるという人生設計が崩れてしまったことも、一人で勝手に抱え込んでパニックになっていた私の背中を優しく押してくれた。
「ありがとう、二人とも」
私はギプスに覆われた右腕を庇いながら、里英と由希子を思いきり抱きしめた。
「あー!和泉が羨ましいよ!」
「そんなことないよ!あ、あのさ、由希子。北ヶ瀬さんとどんな話をしたの?」
「そうだなぁ、あ!あたし今元旦那と離婚調停中でね?ついでに腕のいい弁護士を紹介してもらったの!さすが北ヶ瀬さんだよね〜!」
「そうなんだ。……わ、私のことは、その、何か言ってた?」
「うーん、それは秘密!」
「ちょっと、なんで!?」
「まぁ一つ言えることは、北ヶ瀬さんは和泉が思ってるよりも百倍いい人だってことだよ」
「ん!?」
「北ヶ瀬さんとはいろんな話をしたけど、それは和泉がちゃんと自分で答えを出すまで秘密ね」
「なんでよぉ!」
冷たくて暗かったこの部屋に、明るい笑い声が飛び交う。
私の中にあった孤独も、寂しさも、今はもうどこにもない。