あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。




 ぶっきらぼうに落とされた、一切のごまかしのない言葉。

 オフィスに響く電話のベルも、キーボードを叩く音も、一瞬ですべて遠ざかっていくような錯覚に陥る。




 白石は、本気だ。

 あの日、居酒屋のんべぇで言った『揺さぶってやる』というあの言葉は、決して私をからかうための冗談なんかじゃなかった。


 きっと、白石は本気なんだ。今、分かった気がする。

 だからこそ、私はもう、この白石の優しさに甘えてはいけない。





 「(私、完全に白石と……向き合えないから)」

 北ヶ瀬さんに友達以上の関係を求めているんだと認めたばかりだ。

 これからどうすればいいのか、何をすればいいのか、まだ何も分かってはいないけれど、今の白石にはきっと、こんな半端は気持ちで型を並べるべきじゃないことだけは分かった。


 何よりも、白石に不誠実なことだけはしたくないから。





 「白石、あのね。今日の夜、ちょっと時間くれない?あの、話しておきたいことが……」

 「……いや、今聞く。空いてる会議室行くぞ」

 「え、あ、ちょっと!」



 察しがいい白石は、きっともう分かっている。

 私の腕を強く引いて、白石は同じフロアにある使われていない会議室の扉を開けた。







 シンと静かな手狭なここに、二人だけの沈黙が流れる。

 「で、話って?」


 私の腕を離した白石は、会議室の壁に軽く背中を預けた。

 いつもなら飄々としているはずの白石の立ち姿は、静かで、どこか熱を帯びたように張り詰めている。普段はあまり見ることのない、仕事以外のその表情。








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