夜と最後の夏休み
 そして俺とほのかは家を飛び出して海に向かった。ちょっと遠いし潮の匂いとべたついた風に、ほのかが文句を言うけど知ったことじゃない。


「髪も服もぐしゃぐしゃ!」

「ぐしゃぐしゃだろうが、なんだろうが! おまえはかわいい!」

「佐々木くんに言われたいー!」

「贅沢言うな! 俺で我慢しとけ!」


 そんなふうに、全然かみ合ってないことを、二人で海に叫んだ。

 俺の目からも、ほのかの目からも、涙なんて一つもこぼれなかった。
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