夜と最後の夏休み
「なのに佐々木くん、ぜんぜんわたしに興味なさそう」
ほのかは俺がぼんやりしている間にも、延々と愚痴を垂れ流している。さっきまで夜に宿題を教えてもらいに行っていたけど、部屋に入れてくれず、図書館でも聞けば答えるけどそれ以外はなにも言ってくれず。
あまつさえ(ほのかはときどき難しい言葉を使う)、川瀬だったら部屋に入れたと言われ、くつじょく? で最悪な気分なので勢い余って俺の部屋に駆け込んできた……ということだ。
「それでね」
最後に言われたのが俺と夜の違いなんだそうだ。巻き込むなよ。
夜に呪いを飛ばしつつ外を見る。空は憎たらしいくらい明るくぴかぴかと輝いている。
「で? どうなんだよ」
「なにが」
ほのかは頬を膨らましたままこちらを見下ろす。顔は不機嫌そのものなのに、両手は膝の上で揃えられ、膝はきちんと閉じて傾けられている。こういうとこはなー……女の子っぽくてポイント高いんだけどなー。でも怖いんだよなー。
「夜が言ってたことだよ。おまえにとって夜と俺は扱いが違うだろ」
「あたりまえじゃん」
「夜にとってもそうなんだろ。川瀬とほのかじゃ違う」
むすっとしたまま、ほのかは俺を睨んだ。おまえだって気づいてるだろ。夜が川瀬を見てるときの顔つきと、それ以外の連中を見ているときの顔の違い。
しかもあれ本人……夜と川瀬は気づいてないんだぞ。どういうことだよ。
「わかってるよ。わかって、いるけどさ」
でも、とほのかがつぶやく。
「しょうがないなー! ほら、いくぞ!」
うつむくほのかなんか見たくない。それも夜のことなんかで、こいつがうつむいてしょんぼりするほのかなんか最悪だ。
だから、俺はこいつを連れ出すのだ。
「母ちゃん、ちょっと出かけてくるー!」
「はいはーい。昼は?」
「それまで帰る。こいつの分も、なんか用意しといて」
「じゃあ、ほのちゃんママも呼んじゃう」
お袋の軽すぎる返事に、ほのかが目を丸くした。
「す、すみません!」
「いいのよ。孝寿が引っ張り回してごめんねえ」
ほのかは俺がぼんやりしている間にも、延々と愚痴を垂れ流している。さっきまで夜に宿題を教えてもらいに行っていたけど、部屋に入れてくれず、図書館でも聞けば答えるけどそれ以外はなにも言ってくれず。
あまつさえ(ほのかはときどき難しい言葉を使う)、川瀬だったら部屋に入れたと言われ、くつじょく? で最悪な気分なので勢い余って俺の部屋に駆け込んできた……ということだ。
「それでね」
最後に言われたのが俺と夜の違いなんだそうだ。巻き込むなよ。
夜に呪いを飛ばしつつ外を見る。空は憎たらしいくらい明るくぴかぴかと輝いている。
「で? どうなんだよ」
「なにが」
ほのかは頬を膨らましたままこちらを見下ろす。顔は不機嫌そのものなのに、両手は膝の上で揃えられ、膝はきちんと閉じて傾けられている。こういうとこはなー……女の子っぽくてポイント高いんだけどなー。でも怖いんだよなー。
「夜が言ってたことだよ。おまえにとって夜と俺は扱いが違うだろ」
「あたりまえじゃん」
「夜にとってもそうなんだろ。川瀬とほのかじゃ違う」
むすっとしたまま、ほのかは俺を睨んだ。おまえだって気づいてるだろ。夜が川瀬を見てるときの顔つきと、それ以外の連中を見ているときの顔の違い。
しかもあれ本人……夜と川瀬は気づいてないんだぞ。どういうことだよ。
「わかってるよ。わかって、いるけどさ」
でも、とほのかがつぶやく。
「しょうがないなー! ほら、いくぞ!」
うつむくほのかなんか見たくない。それも夜のことなんかで、こいつがうつむいてしょんぼりするほのかなんか最悪だ。
だから、俺はこいつを連れ出すのだ。
「母ちゃん、ちょっと出かけてくるー!」
「はいはーい。昼は?」
「それまで帰る。こいつの分も、なんか用意しといて」
「じゃあ、ほのちゃんママも呼んじゃう」
お袋の軽すぎる返事に、ほのかが目を丸くした。
「す、すみません!」
「いいのよ。孝寿が引っ張り回してごめんねえ」