詩音と海と温かいもの
荷物をまとめてたら匠海さんが戻ってきて、預けていた箱を開けてくれる。
「つーか、これ全部いる?」
「今はいらないけど」
「じゃあ、置いておけば? 別に邪魔になるって量でもねえし」
「それはさすがに悪いよ。迷惑でしょ」
そう言ったら、匠海さんがムッとした顔で私を見た。
「美海ならなんて言うと思う? 夜でもいいけど」
「えっ、たぶん……『じゃあ置かせて。私のオヤツもちゃんと買い置きしておいて』って言う」
「正解。詩音ちゃんもそう言ってくれ」
匠海さんがニコッと笑った。
その笑顔が好きでたまらない私に、首を横に振るなんてできなかった。
「えっと、じゃあ、お願いします」
「うん。オヤツも置いとく」
「それは……お願いします」
荷物をまとめ直して、部屋を出た。
匠海さんと二人でお昼を食べてから寮に向かった。
寮の入り口で荷物を受け取ると、匠海さんがいつもみたいに優しく笑って頭を撫でてくれた。
「またおいで」
「それ、社交辞令?」
「まさか」
「本当に行っていいの?」
「いいよ。いいから、詩音ちゃんの荷物も置いてあるし」
「ありがとう、匠海さん。明日入学式だよね。行ってらっしゃい」
「……うん、行ってきます」
手を振って、匠海さんが見えなくなるまで寮の入り口で立っていた。
寮に入って寮母さんに声をかける。
手続きを済ませて階段を上がろうとしたとき、寧々子が降りてきた。
「詩音、見てたよ」
「何を?」
「いちゃついてるところ。彼氏?」
「ち、違うし! 友達のお兄さんだよ」
「ふーん? 詳しく教えてもらおうかしら!」
「な、何そのキャラ!!」
寧々子に引っ張られて部屋に向かう。
彼氏って!
匠海さんはそういうのじゃないよ。
そりゃ、かっこいいし、優しくて、すごく素敵な人だけどさ。
だからこそ、匠海さんには、きっともっと素敵な大人のお姉さんが似合うと思う。
私は、私の手を引っ張ってくれた匠海さんに幸せになってほしかった。
「つーか、これ全部いる?」
「今はいらないけど」
「じゃあ、置いておけば? 別に邪魔になるって量でもねえし」
「それはさすがに悪いよ。迷惑でしょ」
そう言ったら、匠海さんがムッとした顔で私を見た。
「美海ならなんて言うと思う? 夜でもいいけど」
「えっ、たぶん……『じゃあ置かせて。私のオヤツもちゃんと買い置きしておいて』って言う」
「正解。詩音ちゃんもそう言ってくれ」
匠海さんがニコッと笑った。
その笑顔が好きでたまらない私に、首を横に振るなんてできなかった。
「えっと、じゃあ、お願いします」
「うん。オヤツも置いとく」
「それは……お願いします」
荷物をまとめ直して、部屋を出た。
匠海さんと二人でお昼を食べてから寮に向かった。
寮の入り口で荷物を受け取ると、匠海さんがいつもみたいに優しく笑って頭を撫でてくれた。
「またおいで」
「それ、社交辞令?」
「まさか」
「本当に行っていいの?」
「いいよ。いいから、詩音ちゃんの荷物も置いてあるし」
「ありがとう、匠海さん。明日入学式だよね。行ってらっしゃい」
「……うん、行ってきます」
手を振って、匠海さんが見えなくなるまで寮の入り口で立っていた。
寮に入って寮母さんに声をかける。
手続きを済ませて階段を上がろうとしたとき、寧々子が降りてきた。
「詩音、見てたよ」
「何を?」
「いちゃついてるところ。彼氏?」
「ち、違うし! 友達のお兄さんだよ」
「ふーん? 詳しく教えてもらおうかしら!」
「な、何そのキャラ!!」
寧々子に引っ張られて部屋に向かう。
彼氏って!
匠海さんはそういうのじゃないよ。
そりゃ、かっこいいし、優しくて、すごく素敵な人だけどさ。
だからこそ、匠海さんには、きっともっと素敵な大人のお姉さんが似合うと思う。
私は、私の手を引っ張ってくれた匠海さんに幸せになってほしかった。