詩音と海と温かいもの
 ……匠海さんは、友達の川瀬美海のお兄さんだ。

 ここから、私の実家とは反対方向にある小崎町という小さな町で、ご両親と美海、匠海さんの四人で暮らしていた。

 母方の祖母が小崎町に住んでいるから、小学生のころは長期休みのたびに小崎町に通っていた。

 同い年の美海と、その隣に住む佐々木夜と三人で宿題をしたり、海で遊んだりした。

 今でも手紙のやり取りは続いていて、三連休には会って遊ぶこともある。

 二人とも、私が実家と仲良くないことを知っているから、『いつでも遊びにおいで』って声をかけてくれていた。

 でも、中学に上がってからは祖母の体調がよくなかったこともあって、あまり行けなくなっていた。

 小学生のころは春休みや夏休みのあいだずっと小崎町にいたのに、去年は一泊しかできなかった。


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