詩音と海と温かいもの
小崎町に長くいなかった理由は、実はそっちだった。
一昨年の夏の終わりに、美海と夜がようやく両思いになった。
二人はずっと両片思いで、なんでくっつかないんだろうって思っていたから、両思いになったのは嬉しかった。
でも、私が少し寂しくなったり、気が引けたりするのも本当で。
なのに、匠海さんは少し呆れたような顔をした。
「それ、気にしてた? 美海に言ってみなよ。めっちゃ怒るから」
「……そうでしょうか?」
「うん。夜だって、詩音ちゃんが帰ったあと寂しがって、すげーぼやいてたよ。宿題のことも聞きたかったみたいだし」
「そうだったんですね……」
匠海さんはまたニコッと笑った。
「あいつらも言ってたと思うけどさ、おばあさんの家が居づらいなら、うちでいいじゃん。部屋空いてるし」
「えっ」
「俺は詩音ちゃんが帰りたくないところになんか、行かなくていいと思うよ? まー、未成年だから、もちろん許可はいるけどさ。あ、一口食べる?」
わざわざ新しいスプーンを出して、匠海さんはグラタンを一口すくって私に差し出した。
ヤバい、泣きそう。
美海と夜にも同じことを言われていたのに、どうして私は忘れていたんだろう。
口を開けて、グラタンを食べた。
「おいしいです……」
「ね、うまいよね」
「……あの、春休みの間、お邪魔してもいいでしょうか?」
「もちろん。親にも確認するから待ってね。詩音ちゃんも親御さんに許可もらっておいて」
「はい!」
私の親は、二つ返事でオッケーだった。
美海の親御さんに渡すようにと、食費と滞在費まであっという間に振り込まれていた。
「うちはオッケー。美海が楽しみにしてるって」
「ありがとうございます!」
今度は我慢できなくて、私はまたボロボロ泣いた。
一昨年の夏の終わりに、美海と夜がようやく両思いになった。
二人はずっと両片思いで、なんでくっつかないんだろうって思っていたから、両思いになったのは嬉しかった。
でも、私が少し寂しくなったり、気が引けたりするのも本当で。
なのに、匠海さんは少し呆れたような顔をした。
「それ、気にしてた? 美海に言ってみなよ。めっちゃ怒るから」
「……そうでしょうか?」
「うん。夜だって、詩音ちゃんが帰ったあと寂しがって、すげーぼやいてたよ。宿題のことも聞きたかったみたいだし」
「そうだったんですね……」
匠海さんはまたニコッと笑った。
「あいつらも言ってたと思うけどさ、おばあさんの家が居づらいなら、うちでいいじゃん。部屋空いてるし」
「えっ」
「俺は詩音ちゃんが帰りたくないところになんか、行かなくていいと思うよ? まー、未成年だから、もちろん許可はいるけどさ。あ、一口食べる?」
わざわざ新しいスプーンを出して、匠海さんはグラタンを一口すくって私に差し出した。
ヤバい、泣きそう。
美海と夜にも同じことを言われていたのに、どうして私は忘れていたんだろう。
口を開けて、グラタンを食べた。
「おいしいです……」
「ね、うまいよね」
「……あの、春休みの間、お邪魔してもいいでしょうか?」
「もちろん。親にも確認するから待ってね。詩音ちゃんも親御さんに許可もらっておいて」
「はい!」
私の親は、二つ返事でオッケーだった。
美海の親御さんに渡すようにと、食費と滞在費まであっという間に振り込まれていた。
「うちはオッケー。美海が楽しみにしてるって」
「ありがとうございます!」
今度は我慢できなくて、私はまたボロボロ泣いた。