(漫画シナリオ)マオ様はご所望です!

05:マオ様に恋しました⁈

◯麻緒の車(朝)

麻緒、運転する
杏、助手席に座る。麻緒に買ってもらったおしゃれな服を着ている

杏ナ⦅獅子原さん()に居候を始めて一ヶ月半。長い夏休みが終わり新学期が始まった⦆
杏ナ⦅今日は、大学の近くで用があるという獅子原さんに車で送ってもらう⦆
杏ナ⦅居候生活は順調。過保護な一面もあるけれど、獅子原さんは適度な距離で見守ってくれる⦆

麻緒、杏を横目にしながら
「五時には終わると思うから」
杏「はい」

杏ナ⦅実は今夜、獅子原さんと食事に行く⦆
杏ナ⦅ーー今朝突然⦆

〈過去回想〉

◯麻緒のマンション・ダイニングテーブル(朝)

杏、麻緒と向かいあって朝食をとる
麻緒、視線を手元のスマホから杏に向ける
麻緒「今日バイトは?」
杏「ないですけど」※キョトン
麻緒「夜の予定なくなったから、飯食いに行く?」

〈過去回想・終了〉

杏(って言われたんだよね……)※にこにこ
杏ナ⦅獅子原さんは、朝早く夜が遅い。土曜も仕事に行くことがある⦆
杏(なかなか一緒に食事はできないから楽しみだな〜)※にやける

◯大学・門前(朝)

車、大学の門の近くに止まる
麻緒、横目で杏を見ながら
麻緒「ついたぞ」
杏「ありがとうございます!」
杏、シートベルトを外し、車から降りようとする
麻緒「杏」
杏、呼ばれて振り返る
麻緒、杏の顔を覗き込む。唇からはみ出たリップをそっと指で拭う
麻緒「その色、よく似合ってる」※クスッと笑う
杏「……っ」

杏(今日一日、集中できる気がしない……)

◯大学・講義室(昼)

杏、授業を受けながら、時計を気にする様子
杏(あと、半日……)※そわそわ

杏、真面目に授業を聞きつつ
杏(あと、二時間……)※わくわく


◯大学・敷地内(夕方)

杏、門に向かいながら歩く
杏(やっと、終わった〜)
杏、スマホを見て微笑む
スマホ画面、麻緒からのメッセージ
『今終わった。これから向かう』
杏ナ⦅業務内容みたいだけど嬉しい⦆
杏、にこにこする

乃莉「杏〜!」
乃莉・奈々が手を振りながら向こうからやってくる
杏「乃莉ちゃん、奈々ちゃん」
乃莉「久しぶり〜」
奈々「なんか雰囲気変わったね」
杏「そ、そうかな」
杏、照れる

杏、乃莉と奈々と校門に向かって歩く
杏ナ⦅乃莉ちゃんと奈々ちゃんは、同じ理工学部で数少ない同性だ⦆
杏ナ⦅ただ、学科が違うので二年になれば自ずと話す機会が少なくなっていた⦆
杏(それでも仲良くしてくれるのは嬉しい)※にこにこ

乃莉「それより杏、家大丈夫なの?」
奈々「ごめんね? うちら夏休みほとんど留守にしてたから」
杏「ううん、全然! むしろこちらこそありがとう。すごく助かったよ」
杏ナ⦅二人はテスト期間中にも関わらず、わたしを家に泊めてくれた恩人だ⦆
奈々「全然。むしろうちらの方が助かったよね」
乃莉「うんうん。テストに杏が教えてくれたトコ、バッチリ出てきたし」※ピース

◯大学・校門(午後)

麻緒、門の近くで車を止めて杏を待つ
杏、乃莉と奈々と敷地内から出てくる

乃莉「ねえ、この後暇?」
奈々「久しぶりに話さない?」
杏「あ、実は」

麻緒、車の窓を開ける
麻緒「ーー杏」

杏、麻緒に気づく
乃莉・奈々、目を丸くする
奈々「誰?」
杏「あ、ごめん。今日は約束があって。また誘ーー」
乃莉、杏の腕を掴む
乃莉「彼氏?」※顔が必死
杏「え……。ち、違うけど」※顔が引き攣る
乃莉「だったら紹介して! お願い!」※両手を合わせる
杏(えぇーー?!)

◯ダイニングレストラン(夜)

杏、麻緒とカウンターに並んで座る。ぼんやりしながら食事をする
頭の中で、乃莉にお願いされる場面を浮かべる

杏(もし、乃莉ちゃんを紹介してうまくいったら、わたし、追い出されちゃうのかな……)
杏、嘆息する
杏(獅子原さんと一緒にご飯を食べたり、買い物したりもできなくなる……?)

麻緒「ーーず、杏?」※様子を窺いながら
杏、ハッとする
麻緒「どうした? なんかあった?」
杏「いえっ。ちょっと、講義の内容でわからないところがあって」※苦笑い
麻緒、目元を緩める。手を杏の頭に乗せる
麻緒「あまり無理すんな」
杏「は、はい…!」
杏(やっぱり嫌だよ……。でもーー)


◯カフェ(日替わり・午後)

杏ナ⦅獅子原さんを紹介はしたくない。けど、乃莉ちゃんとギスギスするのも嫌⦆
杏ナ⦅だから彩絵ちゃんに相談した⦆

杏、彩絵とカフェで食事
杏、パスタ 
彩絵、チキンステーキ定食

彩絵「そんなの断ればいいじゃん」
杏「そう、だよね……」※しゅんとする
彩絵「好きなんでしょ、その彼のこと」
杏、麻緒の顔を浮かべる
杏「……う、うん? 好き、なのかな……」※目を泳がせる

杏ナ⦅彩絵ちゃんとは、バイトの一件から仲良くなった⦆
杏ナ⦅集中講義期間は一緒に授業を受けて、何度かランチもしたことがある⦆

杏、耳を赤くしながら、両手で顔を覆う。
杏「実は、恋したことなくて……」
杏ナ⦅いつもわたしは〝聞く〟専門だった⦆
杏「こういう気持ちも初めてで」
杏ナ⦅恋している子たちを〝いいなぁ〟と眺めながら、どこかで『自分には関係ない』って思っていた⦆
杏「よくわかんないの……」

彩絵、キュンとする
彩絵(なにこのかわいい生き物……)

彩絵「ねえ、どんな人? 同じ大学?」※わくわく
杏、4話最終場面を思い浮かべて頬を赤くする
杏(どんなって……)
彩絵「わかった、ラウンジに来た人でしょ?」
杏、目を丸くする
杏「ど、どうしてわかったの?」
彩絵「へへーん。なんとなくそんな気がしてた」※ウインク
彩絵「だったら、いっそその子に告白させちゃえば?」
杏「え?」
彩絵「あの人なら、バッサリ断りそうだし。そしたらその子も気が済むんじゃない?」

◯麻緒・自宅マンション(夜)

麻緒、ソファーで本を読みながら寛ぐ
杏、同じくソファーに座ってテレビを見る。麻緒の様子を窺いつつ、彩絵の言葉を思い出す

『あの人なら、バッサリ断りそうだし。そしたらその子も気が済むんじゃない?』

杏(獅子原さん、乃莉ちゃんに告白されたら断るのかな……?)
杏(わからないよね。乃莉ちゃんはすごく美人だし……)※溜息を吐き俯く
麻緒、杏を一瞥する
杏(でも待って。ーー乃莉ちゃんに彼氏が)※ハッとする


◯大学・食堂(日替わり・昼)

杏、乃莉と奈々と食事をする
乃莉・奈々、横並びに座る
杏、乃莉の前に座る

乃莉、怒りながら
乃莉「あいつとは別れたの」
杏「あ、そう……なんだ」※呆気に取られる

奈々、不満を込めつつからかうように
奈々「そうそう。大変だったんだから。夏休み中、ずーっと電話がかかってくんの。しかも一回が長い」
乃莉、自棄っぱちに答える
乃莉「だからごめんって」

乃莉、奈々から視線を杏に戻す

乃莉「ねえ、いつ紹介してもらえる? できれば一週間ぐらい時間はほしいけど。髪と肌とか整えたいし」
奈々「うーわ。わがまま。杏、断ってもいいからね」
乃莉「若いうちはある程度許されるのよ。それに早く捕まえないと、いい男からいなくなるんだから」※ムキになる顔
乃莉「杏、協力してくれるよね?」※にっこり笑う

『ーーだったら、いっそ告白させちゃえば?』

杏、苦笑しながら
杏「でも、できるのは紹介だけだよ?」
杏(わたし、最悪だ……)
乃莉「もちろんよ! あとは自分で落とすから」
杏(自分の気持ちも言えないくせに、獅子原さんに断ってもらおうとしてる)


◯麻緒自宅マンション・リビング(夜・決行日前日)

麻緒、ソファーで寛ぎ中
杏「獅子原さん、 明日お時間ありませんか?」
麻緒「え? ……あるけど?」 ※怪訝な顔
杏「行きたいカフェがあるんです……。一緒に行ってください!」
麻緒「いいよ」※笑顔
杏、ホッとする
杏「あ、あと……実は、そのカフェにわたしの友人が来る予定で……。少しだけ、会ってもらえませんか……?」
麻緒、わずかに目を細める
麻緒「……どういうこと?」
杏「その子が獅子原さんと少しお話しがしたいって……」※麻緒の顔色を窺いながら
杏「ダメ、ですか?」
麻緒、嘆息する。
麻緒「杏がいいなら、いいよ」


◯モンブランカフェ(決行日・午後)

杏、麻緒とカフェにくる
杏、麻緒を対面に座ってメニューを広げる

麻緒「ーーこれ?」
杏「はい、このモンブランが有名らしくて」

杏ナ⦅ここは、モンブランが有名なカフェ⦆
杏ナ⦅ここで乃莉ちゃんと待ち合わせしている⦆
杏(事前打ち合わせは完璧……。たぶん)

麻緒「飲み物は? 決まった?」※優しい眼差し
杏「は、はい…!」

麻緒、店員を呼ぶ
麻緒「このモンブラン2つ。飲み物はアイスブラックコーヒーと」
杏「アイスティーでお願いします」
店員「承知しました」

麻緒、メニューを閉じる
杏「楽しみですね」※笑顔
麻緒「うん」

杏ナ⦅本当はどうなるのかすごく緊張している⦆
乃莉からメッセージ
『あと10分ぐらいでつくよ』
杏、表情を曇らせる

麻緒、杏の様子を観察する
杏、気づかず返信する

乃莉、一人で来店。杏を見つけて駆け寄る。
杏・麻緒、皿にはまだケーキが残っている状態

乃莉「杏〜!」
杏「の、乃莉ちゃん」
杏(乃莉ちゃん、気合入ってるっ……!)
乃莉、秋らしいミニワンピースにショートブーツ。メイクもしっかり。マツエクは毛先までカール
麻緒、ちらっと杏と乃莉を見て、気にせずコーヒーを飲む

乃莉「あの、初めまして。杏の友人の乃莉です♡ 同じ理工学部です」
麻緒「……どうも」
乃莉「ご一緒させてもらっていいですか?」
麻緒、杏を窺う
杏「いいですよね?」※作り笑顔で
麻緒、嘆息しつつ
麻緒「杏がいいなら、どうぞ」
乃莉「わぁ、ありがとうございますっ♡」
乃莉、杏の隣に座る。麻緒に向かって尋ねる
乃莉「なに食べているんですか?」
麻緒「モンブランです」※微笑む
杏(ーーえ?)
乃莉「ここは有名みたいですよね。美味しいですか?」※はしゃぐ
麻緒「ええ。栗の甘さがちょうどいいですね」
杏(そんな風に笑うの……)
杏、ケーキを食べる手が止まる
乃莉「栗好きですか?」
麻緒「ええ」
乃莉「わたしも栗、好きです♡」※うっとり

杏、麻緒と乃莉の会話を聞きながら、笑顔を貼り付ける
杏(あぁ……なんか、すごく嫌だ……)
乃莉「(杏)」
乃莉、そっと杏を肘でつく
杏、作戦を思い出す
杏「あ、わたしトイレに……っ」※麻緒を見ながら
麻緒、頷く
麻緒、杏の背中を横目で追いかける

◯カフェ・周辺

杏、トイレに行き、戻ってくるふりをして店の外に出る
杏(カフェ代は、あとで獅子原さんに払おう……)
杏、駅とは反対側に歩く
杏ナ⦅このあと二人きりで話をして、いい感じに盛り上がる……予定だ⦆

乃莉『ーー連絡先を交換して、次の約束を取り付けるのが今日の目標よ』
杏、俯き、ショルダーバックの紐をぎゅっと掴む。

杏(乃莉ちゃん、おしゃべり上手だしかわいいし、きっと獅子原さんも気に入るよね……)
杏、じわっと目に涙が浮かぶ
杏(もし、本当に二人がうまくいったら……どうしよう)

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