初恋リスタート
彼は私の黒歴史
ああ、もうほんとに疲れた……。
金曜日の十八時。
野上(のがみ)総合病院で理学療法士として働く私、白崎(しろさき)英奈(えな)はようやく仕事を終えて更衣室で着替えを済ませた。
更衣室の出入口にある鏡に映った自分の疲れた顔を見てぞっとする。
まだ二十七歳だというのに、肌にみずみずしさの欠片(かけら)もなく、目の下にはくまができているからだ。
「やば。終わってる……」
胸まである長い髪は無造作にひとつに束ねただけで、浮き毛――いわゆるアホ毛がぴょんぴょんと飛び出しており、手で押さえてみたものの気休めにもならない。
大学生の頃は美容院にしっかり通って整えていたが、働きだしてからは余裕がなく、そういえば髪を切ってから三カ月くらいは経(た)っている。
自分で稼ぐようになったら、ちょっと高いトリートメントをして、職場でNGにならない程度のカラーで遊んで、ときにはパーマをかけたりして……なんて理想を描いていたのに、毎日職場との往復で疲れきってバタンキュー。