私が好きになったのはどっちなの?
 花梨ちゃん、勝ち目がないかもしれないな。
「「遅くなりました」」
 花梨ちゃんと渡辺さんの声がして、ふたりが姿を見せると、笑顔で声をかけた。
「おっ、早かったね……って、花梨ちゃん、メガネだね」
 普段はひとつにまとめている髪も下ろしている。
「はい。……コンタクトレンズ取れちゃって」
 俺がひと目見てすぐに指摘すると、彼女が苦笑いする。
 この顔、どこかで見覚えあるんだけど。
 前に既視感があるとは思った。
 だが、今は強く感じる。
 彼女とはどこかで会った。どこでだっけ?
 会うとしたら病院?
 そういえば骨折して救急で樹に診てもらったって……。
 ああ。それ……樹じゃなくて、俺だ。
 バスとトラックの衝突事故があって患者がたくさん運ばれてきて……、救急に応援頼まれて俺が花梨ちゃんの処置をした。
 昔は俺もメガネで髪は黒かったし、樹と間違われても不思議ではない。
 花梨ちゃんは樹だと信じ込んでいるようだから、訂正するのはやめておくか。
 今の樹だって好きなんだろうから、彼女の気持ちに水を差すような真似はしたくない。
「目悪いんだ」
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