私が好きになったのはどっちなの?
 フッと微笑して惚けると、彼女はそれ以上言及してこなかった。
 それから施設内のレストランで夕飯を食べ、また俺が運転して帰る。
 後部座席では疲れたのか花梨ちゃんも渡辺さんも眠っていた。
「今日の釣果は蓮に負けたけど、楽しかった」
 クスッと笑ってそんな感想を口にするので、提案してみる。
「それはよかった。次はお前が企画してみたら?」
「蓮に本当の恋人ができたら考える」
 樹の返答に苦笑いした。
「それ、一生やらないって言ってるようなものだよ」
 俺は付き合いで女とデートすることはあっても、恋人を作る気はない。
「それはどうかな?」
 樹の楽しげな声が車内に響くが、後ろの席のふたりが起きる様子はない。
「やけに確信を持った言い方するじゃないか」
「気づいてなければいい」
 そう言って樹は腕を組み、目を閉じて眠ってしまった。
 気づいてないのはお前の方だとつっこみたくなる。
 恋人ができるその日は近いかもしれない。
 静かな車内で俺のスマホがブルブルと振動する。
 信号待ちの時にスマホの画面をチラッと見ると、【ルカ】と表示されていた。
 またか。
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