私が好きになったのはどっちなの?
「まず気合い入れるんだ?」
 苦笑いしながら突っ込んだら、今度は俺の方が怒られた。
「もうからかわないでください。い、いきます。樹先生、と、隣いいですか?」
 俺が相手でも緊張してる。
「そこ、つっかえてどうする? やり直し」
 厳しく言うと、彼女があたふたしながら謝る。
「はい。すみません。……い、樹先生、隣いいですか?」
「やり直し」
 何度か練習させてできるようになると、花梨ちゃんに告げる。
「樹がいつまでもフリーとは限らない。樹と付き合いたいなら、逃げずに頑張ること」
 そう。もし樹が自分の恋心に目覚めたら、花梨ちゃんにチャンスはない。
 俺としては弟の恋の邪魔はしたくない。どっちの恋も応援したい。
 もう時間がないのだ。
「はい」と声は大きいものの、いつもよりオドオドした様子で返事をする彼女を見て反省する。
 俺も焦って厳しく言い過ぎたな。
「もう明日は会えない。そんな気持ちで頑張るといいよ」
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