私が好きになったのはどっちなの?
8,これはレッスン
「なんでお前が俺の助手?」
 左前頭葉の腫瘍を取り除きながら、今日突然現れたドイツ人の悪友にドイツ語で文句を言う。
 花梨ちゃんの注射の練習に付き合ったあと、俺はルカと手術室にいた。
 今行っているのはカーナビのシステムに似た手術支援機械を使った脳腫瘍手術。機械が脳内の正確な位置をナビゲートしてくれる。
 ルカも脳神経外科医で、俺がドイツに修行に行った時に一緒に切磋琢磨したライバルで親友。渡独した当初は同い年だったこともあってこいつとルームシェアをしていた。
「お前の腕が落ちてないか確認。穏やかな王子の仮面崩れてるけどいいのかな? そんな顰めっ面してると、機械出しの看護師が怯えるよ」
 ルカもドイツ語で意地悪く俺を弄ってきたので、軽く一喝する。
「煩い。モニターで脳表静脈の周辺の腫瘍確認して」
「血管に損傷なく、除去できてるよ。で、診察室にいたあの子、誰」
 花梨ちゃんと診察室にいるのを見られた時から、その質問が来ることは予想していた。
「うちの科の看護師」
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