私が好きになったのはどっちなの?
 素っ気なくそう答えると、彼が小さく笑った。
「名前くらい教えてくれてもいいのに」
「今教えることじゃない」
 冷ややかに言って俺もモニターに目を向ける。
 ルカには悪い癖があって、俺に近づいてくる女に手を出す。
 俺への悪戯で、本人にとってはゲーム。
 自分の方がいい男だと言いたのだろうが、俺は本気で付き合った女などいなかったから、ルカが誘惑してものにしようがどうでもよかった。
 だが、花梨ちゃんにちょっかいを出されるのは困る。彼女が好きなのは樹なのだ。
 ルカに邪魔をさせたくない。
「いつになく不機嫌じゃないか?」
 ルカがつっこんできて、面倒に思いながらも淡々と返す。
「手術中に私語が多いお前に呆れてるだけ」
「ドイツ語なら私語だなんてバレないよ。この程度のお喋りでミスるならお前の腕が落ちたと言いたいね」
「もっと患者に敬意を払えよ」
 慎重に手元を動かしながらルカを注意するが、こいつの無駄話は終わらない。
「俺が手術に立ち会うんだから光栄に思ってほしいね」
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