私が好きになったのはどっちなの?
「目、閉じて」
 優しい声で命じられゆっくりと目を閉じる私に、彼はとても残酷な指示を出す。
「俺を樹と思って」
 その言葉に胸がズキンと痛くなる。
 ごめんなさい。
 蓮先生は蓮先生です。
 罪悪感を抱きながら心の中でそっと訂正すると、彼がそっと唇を重ねてきた。
 ふわりとしたその感触。
 あまりに柔らかくて本当にキスされているのか不安になる。
 指で触れてるのとはまた違うけど、キスってこんななの?
 そう思った瞬間、その感触はすぐになくなった。
 え? 終わった?
 確認するように目を開けると、蓮先生と目が合ってドキッとする。
 その顔はどこか切なそうで、私も泣きそうになった。
「これでいいだろ?」
 先生が笑ってみせたけど、駄々をこねた。
「……全然よくない。もっとちゃんとしてください」
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