私が好きになったのはどっちなの?
10,夢だと思ってほしい
「樹、ちょっと」
 救急に呼ばれ急患の手術をした後、樹を呼んで話をする。
「今朝、渡辺さんとうちのマンションのエレベーターに乗るとこ見たんだけど、付き合ってんの?」
 普段通りの感じで弟に探りを入れてみる。
 もし、ここで『ああ』と樹が認めれば、花梨ちゃんに勝機はない。
 朝、花梨ちゃんと俺の部屋を出た時、もう樹は出勤している時間だったからまさかエレベーターで樹を見かけるとは思わなかった。しかも、弟は渡辺さんと一緒にいて……。
『え?』
 小さく声をふたりを見て足を止めた花梨ちゃんの目を反射的に俺の手で覆った。
『なにかの間違いだよ』
 それしか咄嗟に言葉が出てこなかった。
 樹が渡辺さんの顔に手を触れていて、今にもキスしそうな感じに見えたし、全然フォローにもなっていなかったかもしれない。
 エレベーターの扉が閉まってふたりの姿が見えなくなると、彼女が呆然とした様子で呟く。
『まるで恋人のよう……』
 ショックが大きかったか?
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