私が好きになったのはどっちなの?
 女子校育ちなのだから当然キスの経験はないだろう。
 だから、初めては樹がいいと思って俺は寸前で踏み止まった。
 彼女にとってファーストキスは特別なものだと思ったからだ。
「自分がなにを言ってるかわかってる?」
 花梨ちゃんが撤回することを願って言うが、彼女はむしろ俺を責めるように言う。
「わかってます。今動かなければ樹先生は静香さんとくっつくと言ったのは先生ですよ」
 彼女を急かしてしまったかもしれないが、俺とキスするのはマズい。
「確かに言ったけど……」
 どうやって諦めさせようかと考えようとする俺に、彼女はとても切なそうな顔で俺を説得しようとする。
「先生、私に勇気をください」
 こんな顔をされては拒絶できなかった。
 恋のこの字も知らない彼女には、俺しか頼る人がいない。
 俺はどうすればいい?
 断れば、彼女は樹に告白はしないかもしれない。
 たとえ思いが通じなくても、告白してそれでダメなら諦めもつくし、次への恋へと進めるだろう。
< 205 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop