私が好きになったのはどっちなの?
 飲み物を受け取ってスマホを見ている樹先生に近づき、声をかける。
「隣、いいですか?」
 今は蓮先生が好きだからなんの躊躇もなく言えた。
「ああ」
 私の顔も見ずに樹先生が返事をする。
 これが静香さんだったら、違う反応だったのではないだろうか。
「樹先生、今週末、ご予定空いていたら、また釣りに行きませんか?」
 ふたりでとは言わない。樹先生のことだから、前回と同じメンバーだと思うだろう。
「今週の土曜ならいいよ」
 特にスケジュールを調べずに樹先生が即答し、思わず笑みがこぼれる。
「よかった」
 これで、蓮先生は心置きなくドイツに行けるはずだ。
「また前回と同じ場所になると思うけど、詳細は後で連絡する」
「はい」
 後で連絡すると言っても、樹先生とは連絡先を交換していない。恐らく静香さんにコンタクトを取るだろう。
 私が返事をすると、樹先生は席を立って軽く「じゃあ」と言ってカフェを後にする。
 蓮先生がいた方にそっと目をやると、その姿はもう消えていた。
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