私が好きになったのはどっちなの?
これでは面接に行けない……。
 呆然とした頭でそう思った。
 病院に運ばれたものの、事故の重傷者が多かったせいか処置室には入れず、ストレッチャーに寝かせられたまましばらく通路にいた。
 処置室にいる患者の叫び声が聞こえる。看護師が数人なにやら薬剤や器具を持って慌ただしく私の前を行き来する。
 ……野戦病院みたい。まるで悪夢を見ているようだ。
 足の激痛で頭がおかしくなりそう。
 痛くて苦しいのに、すぐに診てもらえない。
 ひとりでいて怖かった。
 目を閉じて、再び目を開けたら夢だったらいいのに……。
 そう願いながら目を瞑り、ゆっくり目を開ける。
「待たせて悪かったね。君、名前は?」
 目の前に紺のスクラブを着た美形医師がいて、思わずじっと見てしまう。
 年は二十後半くらい。背が高く、黒髪のサラサラヘアで、黒縁の眼鏡をしている。名札には【青山】と書かれていた。
 急いで来たのか、若干息が乱れている。
「名前言える?」
 もう一度聞かれて、足の痛みで顔を顰めながら「……水森花梨」と答えた。
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