私が好きになったのはどっちなの?
「怪我したところ、痛いよね。後で痛み止め出すから。年はいくつ?」
 医師は同情するように言って、次の質問をする。
「二十二歳」
「うん、頭ちょっと血が出てるけど、意識はしっかりしてるな。じゃあ、グーチョキパーしてみて」
 なにを調べるんだろう?
 医師に言われるままやってみせると、彼はにっこりと微笑んだ。
「問題なさそうだな。なにがあったか覚えてる?」
「バスに乗ってたらトラックがぶつかってきて……それで車外に放り出されて……」
 私が説明する間、彼は私の足にそっと触れながら怪我の状態を確認する。
「そう。怖かったよね。息、大きく吸ってみて?」
 先生に言われるまま息を吸うと、「今度は吐いて」と言われた。
「もう一回、吸って、吐いて」
 先生の顔を見ながらやると、「胸が痛いとかない?」と聞かれた。
「……多分。でも、呼吸する音がいつもより大きく聞こえる気が……」
 もう身体中が痛くて自信なく返す私に、先生は優しく言う。
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