私が好きになったのはどっちなの?
「まあ、一種の商売道具だからね。ワセリンや医療用のハンドクリームでケアしてる」
「ワセリンベタつきませんか?」
「まあベタつくけど、しっかり保護してくれるから。とにかく肌荒れすればそこから菌が入る。それで手術して患者さんになにかあれば大変だからね」
 チャラチャラしているように見えても、やっぱそこはプロだ。
「俺もワセリンだな。安いし」
 淡々と樹先生がそんなコメントをするものだから、思わず心の声がもれる。
「私もワセリン使おうかな」
 やはり職業柄よく消毒するので手が荒れる。
 真剣にそんなことを考えていたら、土方先生が蓮先生につっこむ。
「蓮先生、よく看護師にもハンドクリーム借りてるじゃないですか」
「コミュニケーションだよ」
 軽く笑って返す蓮先生の返答が信じられなかった。
「コミュニケーション……ですか? 本当に?」
 疑いの眼差しを向ければ、蓮先生がニッコリと微笑んだ。
「ああ。本当。それで看護師を口説こうとか考えてないよ」
「ハハハッ、蓮先生が追及されてる。いやあ、花梨ちゃん、いいわあ」
 土方先生のコメントに思わず啞然とする。
 土方先生まで花梨ちゃん……て。
 じっと土方先生を見ていたら、蓮先生の視線を感じた。
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