私が好きになったのはどっちなの?
「足もそうだけど、念のため胸のレントゲンも撮ろう」
「あの……先生……私の足治りますか?」
 考えないようにしていたけど、ありえない方向に曲がっている足が元に戻るのか不安だった。
「大丈夫。治るし、ちゃんと歩けるようになるよ」
「本当に?」
 不安でどうしょうもなくて半泣きになりながら確認する私に、彼が微笑しながら断言する。
「本当」
 曇りのないそのブランデー色の双眸。
 彼の言葉で初めて安堵して、大粒の涙がポタッと落ちる。
 突然事故に遭って怪我をして、周りは知らない人ばかりでずっと怖かった。
 私の涙を拭い、彼は私の目を見つめて約束する。
「必ず治るよ」


時が流れて五年後――。
「水森さん、次、点滴お願い」
 先輩ナースの指示で、カートの点滴を手に取る。
「あっ、はい」
 昨日だって先輩ナースの腕で練習した。
 大丈夫。落ち着いてやればできるはず。
「えーと、佐藤喜一さん、男性……」
 輸液剤と患者名や性別、病棟名、投与日などが書かれた指示箋などを先輩ナースと確認し、輸液剤をスタンドにかけ、体内に気泡が入らないよう輸液剤を針まで満たす。
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