私が好きになったのはどっちなの?

 中学の時、母に頼まれて病院に弁当を届けに行けば、父は院長室で若い看護師と楽しんでいて……。
『あっ……』
 抱き合っているふたりを見た衝撃で固まった俺。
『蓮……』
俺と目が合った父は、呆気に取られた顔をしていた。
 口止めはされなかったが、父の浮気は母にも樹にも言わなかった。母は父を愛していたし、弟も父を尊敬していたから言えるわけがない。
 それから俺は父に対して反抗的になって、生活も荒れた。成績はトップを維持していたけど、授業をサボって友達と遊び回り、家にもあまり帰らなくなった。
 ずっとそんな生活をしていたが、転機となったのは高二の秋。
 母が脳梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。俺は友達と遊んでいて、樹も塾に行っていて発見が遅れたのだ。
 俺が家にいたら、母は助かったかもしれない。そう思うとすごく悔しくて……。
 だから、俺は医者になると決めた。失った母の命の分も人を救うために。
 それに、母によく言われていたんだ。『蓮が樹を守ってあげてね』と――。
< 44 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop