私が好きになったのはどっちなの?
「なにからなにまですみません。いただきます」
 面目なさそうに謝りながら彼女はテーブルに着き、手を合わせる。
「先生、こんな短時間で朝食を用意するなんてすごいですね」
「たいしたものは作ってないけど、花梨ちゃんより長く生きてるからね。そういえば、花梨ちゃんっていくつ?」
「二十七歳です。大学卒業後に看護学校に入って、バイトしながら五年かけて卒業したので」
「じゃあ、俺と六歳差か。ちゃんとやりたいこと目指して学校に入り直すなんて偉いね」
 大学を出て一から勉強し直すのだから、生半可な気持ちじゃ看護師にはなれなかっただろう。
「そんなことないです。先生は小さい頃からお医者さんになるって決めてたんですか?」
 食べる前は恐縮した感じだったが、話をして少し落ち着いたのか、彼女がいつもの調子で聞いてくる。
「いや。医者になる気はなかったよ。学校の授業もサボってたし。樹は早くから決めてたけどね。でも、高校の時に母が脳梗塞で急に亡くなって、その時に医者になろうって」
 この話は麻里さんにしかしたことがないので、樹も知らない。
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