私が好きになったのはどっちなの?
「俺の胃袋掴もうとする子はいなかったな。花梨ちゃんが初めて」
「いやいや、先生の胃袋掴みにいってませんから」
「樹狙いだもんね」
「せ、先生!」
 誰か入って来るかもしれないのだからもっとオブラートに包んでほしい。
「じゃあ、いただきます」
 蓮先生は診察室の横の手洗い場で手を洗い、先に食べ始める。
 私も失礼して手を洗って患者さんが座る椅子に座ってお握りを手に取ると、先生が「おっ、程よい柔らかさで美味しい」と感想を口にする。
「お口に合ってよかったです」
 先生のコメントにホッとしつつ自分もお握りを食べるが、自分が握ったので特に美味しさは感じない。
 先生はやっぱり女性に優しいな。
「やっぱり手作りはいいね」
「彼女に作ってもらえばいいじゃないですか」
 なにも考えずにそんな言葉を言ったら、先生が軽く返す。
「そういうの、面倒だから」
 うわー、女たらしらしい言い訳だわ。
「先生、そんな女遊びばかりしてると、老人になった時ボッチになっちゃいますよ」
 上から目線でお説教したら、彼が茶化すように笑った。
< 77 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop