負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る
 そうやって、なんやかんや、互いにほだされてたんだと思う。

 誰かの一番になりたいメイサと、他人との距離の取り方ばっか考えてた俺とが、練習の建前で少しずつ近づいて、甘え合って、気づけばその建前も捨てて馴れ合って。

 馬鹿みたいだけど、まあ、それでもいい気がした。

 だから、まったく関係ない他人に邪魔されたらムカつくわけで。



 いつの間にか、こいつ、俺のこと好きなんだろうなあって自然に思うようになってたし、たぶんメイサもわかってたと思う。

 互いに100日って縛りがあったから口にしなかっただけで。

 ……なのに、メイサは俺のクラスメイトに訳わかんない嫌がらせされてた。

 3月の頭、柊先輩から突然、


『須藤くんのダーリン、図書室前の渡り廊下で囲まれてるよ』


 なんて園芸部のグループトークで言われた。

 慌てて駆けつけたら、メイサがクラスメイトの女子にわあわあ言われてる。

 ……それ以上馬鹿なことを聞かせたくなくて、メイサの耳を塞いだ。

 驚いた顔が俺を見上げて、少なくとも泣いてはなくて安心する。

 女子には適当に言い返して、追い払った。

 後ろからメイサを抱えたら、ムスッとした顔で俺を見上げた。


「ごめん」

「別に、助けに来なくてよかったのに」

「なんでだよ。来るよ。俺のせいだし」

「ムカつく」

「……なんで?」

「自業自得だから。私が柊ちゃんに馬鹿みたいなマウントしたから、同じこと返されただけ」


 むくれるメイサの尖った唇に、キスしたいなって思う。

 きっと、そんなことを考えてるのがバレたら怒られるんだろう。

 だから、ちょっと考えてから、ちゃんと返す。


「やだ、助ける。お前は俺の子犬だから、手え出されたら、ムカつく」

「……なにそれ」


 たぶん、男のプライドとか、須藤家のルール「“妻”が最優先」とか、そういう感じ。

 でも、まだこいつは俺のもんじゃないから、うまく説明できない。


「えっとね、俺が助けたかったんだ。メイサのこと」

「……うん。でも、私も自分で言い返したかった」

「そっか、ごめん、邪魔して」

「ううん。ありがと、助けてくれて」


 やっとメイサが笑ってくれた。

 なんつーか、こいつ、意外と好戦的だ。

 嫌いじゃないけど。



< 105 / 109 >

この作品をシェア

pagetop