負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る
 次の日と、その次の日も同じように証拠を取った。

 昼飯のときにからかったら、メイサがやり返してきて、もうちょいだったのに司書の先生に邪魔された。

 まあ、次はちゃんと場所を考えよう。


 次の日の朝、部活が終わってすぐ教室に向かった。

 例の女子たちが、


「須藤くん、おはよう」


 って、いつもと同じように挨拶してくるから、俺はいつもよりニッコリ笑って、その3人に向かい合った。


「あのさ、俺の子犬に手え出すなっつったよね」

「えっ」

「俺が、なんも気付いてないと思った?」


 ポケットから紙切れを取り出したら、3人の顔が、青くなった。

 スマホの動画を見せると、一人が泣き出す。


「隠し撮りなんて、ひどい」

「あの先輩に言われてやったの?」

「俺のこと舐めすぎっしょ」


 堪えきれなくて、紙切れを握りつぶした。


「ふざけんな。つまんねーことしやがって。俺は"みんな"なんかのもんじゃねえんだよ」

「だって、」

「だってもクソもあるか。試験中に言わなかっただけ、優しいと思ってくれ」

「……っ」


 睨み合いの末に3人とも泣き出した。

 他のクラスメイトは遠巻きに黙って見ていて、追い打ちをかけようとしたとき担任が入ってきた。


「何してんだ?」

「こいつらが俺の女に嫌がらせしてたんで、止めてもらうようにお願いしてました」

「ひどいよ、須藤くん」

「どっちが? あ、先生、これです」


 紙切れを広げて先生に渡す。

 ついでに動画も見せて、先週からのことを説明する。


「そこ、3人と須藤はあとで生徒指導室で話聞くから。全員席に着いて、ホームルーム始めるぞ」


 その後話を聞かれて、そこでも3人が騒いだので、親を呼ばれて校長室へ。

 試験の採点中で、職員室や準備室が使えなかったからだ。

 校長室で待ってたら、教頭と親父が顔を出した。


「藤也、何してるのさ」

「げえ、親父!? なんで?」

「教頭先生が俺の昔の担任だから。瑞希もね」

「そうなん」

「メイサちゃん庇って揉めたって聞いたけど」

「うん」


 相手の母親も来て、お説教が始まった。

 俺が言われたのは場所を考えろとか、追い詰めすぎるなとか、それくらい。

 でも、相手の母親に


「須藤くんのことが好きすぎて、やり過ぎちゃっただけなの。許してくれるかしら」


 なんて甘っちょろいことを言われて、苛つく。


「許しません。愛する女を傷つけられて日和るなんて、須藤の名折れです。親父に殺されちゃう」

「そうですね」


 隣にいた親父が柔らかく微笑んだ。


「好意は嫌がらせの理由になりません。きちんとした謝罪もなく、なあなあで済ませる態度はわたくしどもとして受け入れられるものではありません。あ、私たちへの謝罪は不用です。謝るのは、三枝さんに対してお願いします」


 校長が口元を押さえて震えてるし、教頭が呆れた顔で親父を見た。


「須藤、お前、そんなやつだっけ?」

「こんなやつですよ、俺は。大人になって少ししっかりしました」

「父子してそっくりだな、ほんとに。あー、でも須藤……藤也は三枝には何も言われたくないんだな?」

「はい。三枝先輩はこの人たちの顔なんて見たくないと思いますので。どうせ謝るふりして言い訳しかしないでしょうし」

「藤也、言い方」


 親父が苦笑して俺を見た。

 あえてニコッと笑って親父を見返した。


「じゃあ親父が言ってやって。二度と俺と先輩に関わるなってさ」

「……申し訳ありませんが」


 親父は居住まいを正して相手の親に顔を向けた。

 こういうとき、背が高くて顔のいい親父は迫力が出る。

 俺も負けないように背筋を伸ばした。


「謝れば何しても許されると思われたくありませんので、三枝さんと息子へのこれ以上の付きまといや、謝罪と称して絡むのはご遠慮ください」

「親父……」

「須藤、言い方!! ……あー、申し訳ありません。学校と致しましても……」


 忘れてた。

 親父は見かけより気が短いし、口が悪い。

 喋らせた俺が悪かった。


 あとは校長と教頭が相手をなだめておしまい。

 帰り際に、店が忙しい時期に呼び出し食らったのを親父から怒られたけど、それは俺が悪いから素直に謝っておいた。たぶん帰ったら母さんにも小言を言われるだろうけど、それでメイサを守れたなら安いもんだ。

 それに、帰りにメイサが頭を撫でてくれたから、それでいいんだ。

 メイサが頭を撫でると嬉しそうにする気持ちが分かってしまった。



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