【番外編追加】ロマンスに、キス
「…っ、だからっ…覚悟とかっ!」
声が震える。
止められない。
「あたしに聞いてもないのに、どうやってあたしのこと分かるの!?」
嬉しいのに。
胸の奥がじんわり熱くなるくらい、嬉しいのに。
素直になれない。
どうしても。
口から出るのは、可愛くない言葉ばっかりで。
こんなんじゃ、いつか嫌われるってわかってるのに。
それでも――
こんなあたしでも受け止めてほしい。
全部、わかってほしい。
あたしが今ほんとは泣きたくて、でも必死に堪えてることも。
その全部を、佐野に見ていてほしい。
「…じゃあ、聞くけど」
低く落ちた佐野の声の直後、手首を掴まれた。
力じゃなくて、勢いに引き寄せられるみたいに、身体が後ろに倒れていく。
ポスッ。
頭が落ちた先は、佐野の匂いのする枕。
一瞬で視界が佐野で埋まる。
近すぎて、息を吞む。
顔も、影も、呼吸すらも、全部が近い。
逃げられない――じゃなくて、逃げたくなかった。
佐野の目が、真上からあたしだけを見ている。
その視線だけで、泣きそうになるのをまた必死にこらえた。