【番外編追加】ロマンスに、キス



天使、というよりは――

どっちかって言うと、お姫様。



いや、正直に言えば、ムカつくし、舌打ちしたくなることもある。
実際、する。
もちろん、そのまま喧嘩になる。



価値観なんて、合ってるほうが少ない。

言い方も、考え方も、タイミングも、噛み合わなくてイライラすることのほうが多い。



それでも。



喧嘩するたびに、言い合って、無視して、気まずくなって、それでも時間が経つと、結局同じところに戻ってくるたびに、俺はたぶん、毎回同じことを思う。



それでも、こいつだけは手放したくねーな、って。


理由なんてない。
正しいかどうかもわからない。


ただ、いなくなる想像はしたくない。



「佐野、今日の放課後は?」



何気ない声。

でも、たぶん、俺からの誘いを待ってるんだろう。


しょうがねーな、と思いながら、



「……映画、見に行く?」



口にした瞬間、一千華の表情が、ほんの一瞬だけ緩んだ。


見逃さなかった。

ああいうの、本人は隠してるつもりなんだろうけど。



「しょうがないから、行ってあげる」



得意げな顔で、上から目線。

まるで、こっちが頼み込んだみたいな言い方。



それ、こっちのセリフだろ。


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