【番外編追加】ロマンスに、キス



ショッピングモールを出ると、夕方の風が少しだけ冷たかった。

人の流れに紛れながら歩いていると、不意に一千華が横を向く。



「佐野、手繋ぎたいでしょ」



また、俺がねだったみたいに言いやがって。


言い返すのも面倒で、俺はそのまま一千華の手をぎゅっと握った。



一瞬、驚いたように指が強張ったのが伝わってきて、それがなんだか可笑しくて、次の瞬間、俺はその手を引いて、一千華を強く引き寄せた。



「……っ」



人目なんて、どうでもよかった。

腕の中に収まる体温が、やけにしっくりくる。


ぎゅっと抱きしめると、耳元で、少し高めの声が聞こえた。



「……外、なんですけど」



怒ってるのかと思ったけど、声の端が微妙に上ずってて、どこか機嫌がよさそう。


……かわいい。


ほんと、どうしようもなく。



「キス、したいの?」


「それは、佐野のほうでしょ」


「はは、そーだな」



素直じゃねーし、頑固だし、わがままだし、ほんと、どーしようもない。



それでも、俺にとっては世界一かわいいに天使に、キスを落とす。


すると、天使は、顔を真っ赤にしながら、膨れた顔をした。


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