ロマンスに、キス



日陰で、風が通って、壁にもたれればすぐ眠れるような場所。
そこに座ると、佐野は呆れたみたいに眉をひそめた。

でも、あたしが袖をもう一度ちょい、と引っ張って目で“来い”と合図すると、なんだかんだ言いながら、佐野は渋々あぐらをかいて隣に座る。

距離は、ほんの数センチ。その距離がやけに居心地いい。


トン。


意識する前に、あたしの頭は佐野の右肩に落ちていた。
その肩は、思ったより広くて、思ったより硬くて、でも不思議と安心してしまう温度だった。


やば…眠れる。


まぶたが落ちていく。昼休みのざわめきも、風の音も、全部遠くにいく。代わりに、佐野の呼吸だけが近すぎる。



「お前、安心しすぎ」



目を閉じたまま聞こえるその声は、いつものぶっきらぼうというより、どこか呆れたようで、でも…少しだけ優しい。



「(安心、しすぎ…?)」



そりゃそうだ。佐野の肩はあったかくて、力が抜ける。ここにいると、変な男に触られたり、変な写真撮られたり、そういう“嫌なこと”から全部守られる気がする。

だから言ってしまった。



「……佐野の隣、安心する」



自分でも驚くくらい、声は小さくて、眠気に溶けるみたいに柔らかかった。


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