ロマンスに、キス
「誰にでも、こういうことしてんの?」
「そんなわけないじゃん…佐野にしかしない」
言った瞬間、自分で自分に驚いた。こんな甘い言い方するつもりじゃなかったのに、眠気に負けて、口が勝手に動いた。
「(…やば)」
でも、佐野は何も返してこない。責めもしないし、茶化しもしない。
あたしのまぶたの裏は、太陽の光でじんわり赤い。風の音、佐野の呼吸、肩の温度。 全部が心地よくて、本当に猫みたいに丸まって寝れそうだった。
……なのに。
ふ、と。
突然、まぶたの裏の光が遮られた。日陰に入ったような、誰かが影を落としたような感覚。
「(ん…? 佐野?)」
目は開けない。けど、気配だけはすぐ分かる。
佐野が、顔を近づけている。息が少しだけ肌にかかる。
その直後だった。
ふに。
唇に、柔らかいものが触れた。
一瞬すぎて、なのに永遠みたいで、頭の中が真っ白になる。
「(……え、なに……?)」
柔らかい、温かい、でも確かに“唇”の感触。その“点”だけが急に熱をもって、全身の毛穴が一気に開くみたいにぞわっとする。
心臓が跳ねて、眠気なんて一瞬で吹き飛んだ。
ゆっくりと目を開けば、ちょうど息が触れそうな距離に佐野の顔があった。