ロマンスに、キス
なのに。
鏡に映る自分を見ても、達成感も、満足感もなくて。
むしろ、胸の奥にぽっかりと穴が開いたみたいに、何も感じない。
かわいい格好をしてないから?
手を抜いたから?
理由を探そうとすればするほど、ミントの冷たさだけが口の中で浮いて、あたしの気持ちは、どこにも行き場がなくなる。
なんだ、この虚無感は。
「一千華ちゃん、ごめん。道、混んでて」
少し焦った声と一緒に、視界に入ってきたのは、つやつやに磨かれた高級車。
運転席の窓が下がって、整った笑顔がこちらを見る。
「優くん、おはよう~!」
反射みたいに、声が一段高くなる。
口角を上げて、目を細めて、ちょうどいい“かわいい”を作る。
考えなくても、もう体が勝手に覚えてる。
優くんは、最近ナンパされて知り合った大学生。
顔が完全にタイプだったから、連絡先を交換して。
やりとりを重ねるうちに、自然とデートする関係になった。