季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい
「うわー、本当に藤乃そっくりだな」
花音ちゃんが抱えていた赤ん坊を見て、瑞希が笑った。
「藤乃さん、抱っこしてあげてください」
「えっ、わ、はい。……わ、重いし、温かい」
花音ちゃんから差し出された赤ん坊を受け取ると、見かけよりずっと重くて、温かくて、そして柔らかかった。
「マジで。俺も俺も」
「お兄ちゃん、人形じゃないんだから」
一度花音ちゃんに赤ん坊を渡し、瑞希が恐る恐る抱っこした。
赤ん坊は目をぱちっと見開いて瑞希を見つめている。
そっか、瑞希はこの子の伯父さんなんだよなあ。
「なんつーか、命だなあ」
ふと黙ったままの澪さんを見ると、ぼろぼろ泣いていた。
慌ててボックスティッシュを差し出すと、ますます泣いてしまう。
「す、すみません……その、瑞希さんが赤ちゃんを見る目が優しくて、なぜか泣けてしまいました」
「泣くこっちゃねえだろ。花音、澪も抱っこしていい?」
「もちろん。澪さん、抱っこしてあげてもらえる?」
「は、はい!」
澪さんが恐る恐る手を伸ばした。
瑞希はそっと赤ん坊と澪さんの両方を支えている。
その瑞希の顔を見たら、澪さんが泣きたくなった気持ちがわかった。
「藤乃さん」
「うん?」
「お兄ちゃんが旦那さんの顔してますよ」
「そうだねえ。俺、泣きそう」
「……藤乃さんはお兄ちゃんのなんなんですか?」
「瑞希にとって俺は唯一無二の親友です」
「自分で言うんですね、それ」
澪さんが、赤ん坊を花音ちゃんに返した。
赤ん坊はふわふわとあくびをして目を閉じた。
「やっぱりお母さんが安心するんですねえ」
「そうだと嬉しいなあ」
その後少し話をして、瑞希と澪さんを見送る。
病室に戻ったら、赤ん坊はベビーベッドに寝かされていた。
「この子、あまり泣かないんだね」
「そうですね。他のお子さんやお見舞いの様子を見てると、他の人に抱っこされるて泣いている子が多いですけど、この子は藤乃さんにもお兄ちゃんにも澪さんにも泣かなかったですね」
「たぶん、俺と同じで瑞希のこと大好きなんだよ」
「澪さんも?」
「澪さんが抱っこしてる間、ずっと瑞希も支えてたからね。安心したんじゃないかな」
カバンから書類を出した。
花音ちゃんも病院からもらった書類を出してくる。
「名前を決めないと」
「そうだね。花音ちゃんは何がいい?」
「やっぱりこれがいいです。私、藤乃さんの名前が好きなので」
「じゃあそうしよう」
「藤乃さんはそれでいいんですか?」
俺は赤ん坊の頭を撫でながら、花音ちゃんがいいと言った名前を呼んでみる。
うん。これがいい。
「いいよ。花音ちゃんが呼んでくれるから、俺は俺の名前が好きだ。だから、好きな気持ちを継げたらいいと思う」
出生届に名前を書いた。
須藤藤也。
相変わらず藤の字が続いてごちゃつくけど、それでも俺はこの子を藤也と呼ぶことにした。
「藤也。待ってるから、はやくうちにおいで」
「……私も、さっき澪さんが泣きたくなった気持ちがわかりました」
花音ちゃんがティッシュで目元を押さえながら言った。
「藤也を見る藤乃さんが、すごくお父さんでした。あなたの子を産めてよかった」
たぶんありきたりで、どこにでもある話なんだけど。
それでも俺はちゃんと幸せで、それは目の前で涙ぐむ女の子のおかげだ。
「ありがとう、花音ちゃん。これからも、息子ともども、よろしくね」
赤ん坊の寝息が、静かに病室に響いた。
花音ちゃんが抱えていた赤ん坊を見て、瑞希が笑った。
「藤乃さん、抱っこしてあげてください」
「えっ、わ、はい。……わ、重いし、温かい」
花音ちゃんから差し出された赤ん坊を受け取ると、見かけよりずっと重くて、温かくて、そして柔らかかった。
「マジで。俺も俺も」
「お兄ちゃん、人形じゃないんだから」
一度花音ちゃんに赤ん坊を渡し、瑞希が恐る恐る抱っこした。
赤ん坊は目をぱちっと見開いて瑞希を見つめている。
そっか、瑞希はこの子の伯父さんなんだよなあ。
「なんつーか、命だなあ」
ふと黙ったままの澪さんを見ると、ぼろぼろ泣いていた。
慌ててボックスティッシュを差し出すと、ますます泣いてしまう。
「す、すみません……その、瑞希さんが赤ちゃんを見る目が優しくて、なぜか泣けてしまいました」
「泣くこっちゃねえだろ。花音、澪も抱っこしていい?」
「もちろん。澪さん、抱っこしてあげてもらえる?」
「は、はい!」
澪さんが恐る恐る手を伸ばした。
瑞希はそっと赤ん坊と澪さんの両方を支えている。
その瑞希の顔を見たら、澪さんが泣きたくなった気持ちがわかった。
「藤乃さん」
「うん?」
「お兄ちゃんが旦那さんの顔してますよ」
「そうだねえ。俺、泣きそう」
「……藤乃さんはお兄ちゃんのなんなんですか?」
「瑞希にとって俺は唯一無二の親友です」
「自分で言うんですね、それ」
澪さんが、赤ん坊を花音ちゃんに返した。
赤ん坊はふわふわとあくびをして目を閉じた。
「やっぱりお母さんが安心するんですねえ」
「そうだと嬉しいなあ」
その後少し話をして、瑞希と澪さんを見送る。
病室に戻ったら、赤ん坊はベビーベッドに寝かされていた。
「この子、あまり泣かないんだね」
「そうですね。他のお子さんやお見舞いの様子を見てると、他の人に抱っこされるて泣いている子が多いですけど、この子は藤乃さんにもお兄ちゃんにも澪さんにも泣かなかったですね」
「たぶん、俺と同じで瑞希のこと大好きなんだよ」
「澪さんも?」
「澪さんが抱っこしてる間、ずっと瑞希も支えてたからね。安心したんじゃないかな」
カバンから書類を出した。
花音ちゃんも病院からもらった書類を出してくる。
「名前を決めないと」
「そうだね。花音ちゃんは何がいい?」
「やっぱりこれがいいです。私、藤乃さんの名前が好きなので」
「じゃあそうしよう」
「藤乃さんはそれでいいんですか?」
俺は赤ん坊の頭を撫でながら、花音ちゃんがいいと言った名前を呼んでみる。
うん。これがいい。
「いいよ。花音ちゃんが呼んでくれるから、俺は俺の名前が好きだ。だから、好きな気持ちを継げたらいいと思う」
出生届に名前を書いた。
須藤藤也。
相変わらず藤の字が続いてごちゃつくけど、それでも俺はこの子を藤也と呼ぶことにした。
「藤也。待ってるから、はやくうちにおいで」
「……私も、さっき澪さんが泣きたくなった気持ちがわかりました」
花音ちゃんがティッシュで目元を押さえながら言った。
「藤也を見る藤乃さんが、すごくお父さんでした。あなたの子を産めてよかった」
たぶんありきたりで、どこにでもある話なんだけど。
それでも俺はちゃんと幸せで、それは目の前で涙ぐむ女の子のおかげだ。
「ありがとう、花音ちゃん。これからも、息子ともども、よろしくね」
赤ん坊の寝息が、静かに病室に響いた。