『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
目立たないように、
息を潜めるシルヴィアたちの背後では、
王宮へ向かって怒号の波が膨れ上がり、
火の手が次々とあがっていく。

馬車は城壁を超え、
市街地を抜ける。
王都の門が視界の先に見えた。

「エルヴィン……っ」
不安に震えるシルヴィアの手を、
彼は力強く包み込む。

「大丈夫だ。何も心配いらない。
 ウィステリアで、新しい人生を始めるんだ」

「……あなたを信じてるわ。何があっても。」

馬車は夕陽を切り裂くように走り続け、
ついに王都ラデスフローの外門へ到達した。

エルヴィンたちが外門をくぐった
ちょうどその瞬間――
王都では、
市民たちの群れが王宮下まで迫っていた。

エルヴィンは振り返らない。
過去よりも、祖国よりも、
彼の腕に抱く未来の方がはるかに大切だった。

馬車は王都を離れ、
自由と新しい幕開けへと向かって走り出した――。

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