『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
王都は、
まるで巨大な獣がうめき声を上げているようだった。
怒号、悲鳴、遠くで上がる火の手。
市民たちは王宫へとなだれ込み、
王の軍勢は次々と瓦解していく。

衛兵たちの中には市民出身の者も多く、
彼らの側へと寝返るものが
後を絶たなかった。

エルヴィンは馬を操るクラウスと連絡を取りつつ、
外套に身を包み息を潜めるシルヴィアを
かばうように抱きしめる。

「王都の外は道も舗装されていない。揺れるから、俺の膝の上においで。」

「え、えぇ……!」
シルヴィアは恥じらいつつも
お尻が痛かったのは事実なので
素直にエルヴィンの膝の上に乗る。

エルヴィンに抱えられながら、
シルヴィアはそっと馬車の外に目を向ける。
はっきりとは見えないけれど、
王都の空が赤く染まり、
王宮の尖塔の影が揺れているようだ。

その王宮では、
王家の人間が次々と拘束され、
怒れる市民たちによって連行されていく。
今後、彼らは高等法院で裁かれることになるだろう――
その裁きがどれほど残酷なものになるか、
口に出さずとも誰もが知っていた。
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