『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
エルヴィンたちが門に辿りついたのは
――本当にギリギリのタイミングだった。
一夜にして王宮を掌握した市民たちは
貴族たちの逃亡を防ぐために
すぐさま「門を閉じろ!」と声をあげた。
つまり、
出発予定が1日でも後ろにズレていたら
亡命は失敗に終わっていただろう。
「クラウス!急いで!」
「お任せを!」
エルヴィンたちの馬が門を飛び抜けた
その数時間後には、
市民たちによって大きな鉄門が
地響きを立てて閉ざされてしまった。
金属が激しく閉じる音が――
自由と、生存と、王都の終わりを告げていた。
そして王都が封鎖されてすぐ始まったのはーー
貴族狩りである。
王家が捕らえられたものの、
間一髪で王宮を抜け出すことに成功し、
血相を変えて邸に転がり込むラノイ侯爵夫妻。
だが屋敷はしんと冷え切っていて、
エルヴィンとシルヴィアの姿は、
どこにもなかった。
エルヴィンたちは王都を去ったのだと理解した瞬間、
侯爵の顔色が変わる。
「そういえば……エルヴィンが、一緒に行こうと……
私を、妻を……手を差し伸べてくれたのに。
あの時、耳を貸しておれば……!」
膝から崩れ落ち、
震える手で暖炉の冷たい灰を握りしめる。
だが、もう遅かった。
袋のネズミとなった彼らは
ただ捕らえられるのを待つばかりである。
――本当にギリギリのタイミングだった。
一夜にして王宮を掌握した市民たちは
貴族たちの逃亡を防ぐために
すぐさま「門を閉じろ!」と声をあげた。
つまり、
出発予定が1日でも後ろにズレていたら
亡命は失敗に終わっていただろう。
「クラウス!急いで!」
「お任せを!」
エルヴィンたちの馬が門を飛び抜けた
その数時間後には、
市民たちによって大きな鉄門が
地響きを立てて閉ざされてしまった。
金属が激しく閉じる音が――
自由と、生存と、王都の終わりを告げていた。
そして王都が封鎖されてすぐ始まったのはーー
貴族狩りである。
王家が捕らえられたものの、
間一髪で王宮を抜け出すことに成功し、
血相を変えて邸に転がり込むラノイ侯爵夫妻。
だが屋敷はしんと冷え切っていて、
エルヴィンとシルヴィアの姿は、
どこにもなかった。
エルヴィンたちは王都を去ったのだと理解した瞬間、
侯爵の顔色が変わる。
「そういえば……エルヴィンが、一緒に行こうと……
私を、妻を……手を差し伸べてくれたのに。
あの時、耳を貸しておれば……!」
膝から崩れ落ち、
震える手で暖炉の冷たい灰を握りしめる。
だが、もう遅かった。
袋のネズミとなった彼らは
ただ捕らえられるのを待つばかりである。