『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―
扉が開き、二人はゆっくりと歩みを進めた。
目の前の玉座には
ウィリアム国王とアリス王妃がいる。
二人から溢れ出る慈愛の微笑みは、
人を見下すような視線を向ける
ユーフォルビアの国王夫妻と
あまりにもかけ離れていた。
まず国王が穏やかに口を開く。
「長旅、ご苦労であった。よく無事に辿り着いた」
「陛下のご温情に深く感謝いたします。ロータスの騎士団の皆様にも危ないところを助けていただき、何と御礼を申し上げたら良いか」
エルヴィンが深く頭を下げ、
シルヴィアも腰を落として敬意を示す。
「今後の希望を聞かせてもらおうか。残念ながらウィステリアに亡命した以上、君が受け継ぐはずだった爵位はこの国では通用しない。君の有能さは私も知っている。いくつか仕事を斡旋することは出来るが———」
ウィリアム国王の問いかけに
エルヴィンが顔をあげる。
「えぇ、心得ています。それはもとより覚悟の上です。ただのエルヴィン・ラノイとしてウィステリアで生きていきます。もともと私はユーフォルビアで外交に携わっていたので、その分野でならお役に立てるかと……」
最後の言葉をエルヴィンは言い淀んだ。
ウィステリアに亡命したことは
ある意味でチャンスでもある。
一度封印した自分の夢を形に出来るかもしれない。
だが成功するか分からないそれに、
シルヴィアやクラウスを巻き込んで良いのか。
エルヴィンには決心がつかない。
目の前の玉座には
ウィリアム国王とアリス王妃がいる。
二人から溢れ出る慈愛の微笑みは、
人を見下すような視線を向ける
ユーフォルビアの国王夫妻と
あまりにもかけ離れていた。
まず国王が穏やかに口を開く。
「長旅、ご苦労であった。よく無事に辿り着いた」
「陛下のご温情に深く感謝いたします。ロータスの騎士団の皆様にも危ないところを助けていただき、何と御礼を申し上げたら良いか」
エルヴィンが深く頭を下げ、
シルヴィアも腰を落として敬意を示す。
「今後の希望を聞かせてもらおうか。残念ながらウィステリアに亡命した以上、君が受け継ぐはずだった爵位はこの国では通用しない。君の有能さは私も知っている。いくつか仕事を斡旋することは出来るが———」
ウィリアム国王の問いかけに
エルヴィンが顔をあげる。
「えぇ、心得ています。それはもとより覚悟の上です。ただのエルヴィン・ラノイとしてウィステリアで生きていきます。もともと私はユーフォルビアで外交に携わっていたので、その分野でならお役に立てるかと……」
最後の言葉をエルヴィンは言い淀んだ。
ウィステリアに亡命したことは
ある意味でチャンスでもある。
一度封印した自分の夢を形に出来るかもしれない。
だが成功するか分からないそれに、
シルヴィアやクラウスを巻き込んで良いのか。
エルヴィンには決心がつかない。