元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
翌日。


この日の打ち合わせは予想以上に長引いた。クライアントを見送って、和那がオフィスに戻った頃には、すっかり日が傾いていた。


「すっかり遅くなっちゃったね。」


周囲に声を掛ける和那に


「だが、お陰で今後の方向性はしっかり固まったからな。時間に見合った、有意義な打ち合わせだったよ。」


部長が笑顔で言う。


「はい。」


「それじゃ、私はこれで。君たちも今日は、早めに切り上げてくれ。」


「お疲れさまでした。」


オフィスを出て行く上司の後姿を見送った和那は


「じゃ、部長もああおっしゃってるし、今日はもう、片づけ次第、みんな上がって。」


とチ-ムのメンバ-に告げる。


「わかりました。」


こうして社員たちも動き出し、ひとりまたひとりと帰宅の途に着いて行く。そして、彼らを見送りながら、手を動かしていた和那も席を立とうとした、その時だった。


「南澤さん。」


声がする、湊だ。


「あっ、朝比奈さんもお疲れ様。」


笑顔で応えた和那に


「あの・・・。」


一瞬躊躇ったような様子を見せた湊だったが


「もし時間があったら、少し付き合ってもらえませんか。」


すぐに思い切ったように言う。


「別に構わないけど、何か緊急に打ち合わせなきゃならないこと、あったっけ?」


「じゃ、お願いします。」


和那の問いには直接答えず、頭を下げると、湊が回れ右をして歩き出すから、和那も慌てて席を立つ。オフィスを出て、面談室に向かう・・・のか思ったら、スタスタとエレベ-タ-に向かって歩を進める湊に


「えっ、どこ行くの?」


和那は思わず尋ねると、振り返った湊は


「仕事の話じゃないと、まずいですか?」


「えっ?」


「そうじゃない話がしたいんです、南澤さんと。」


そう言って、真っすぐに和那を見た。
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