元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
⑨仕事という未来
一週間ほどが過ぎた。


(株)ネクストリンクには、今日も慌ただしい朝が訪れている。社内を行き交う社員たち、電話のベル、キーボードを叩く音・・・いつもと変わらないオフィスの風景だった。


その中で、以前と変わったことがある。


「朝比奈さん。」


「はい。」


和那に呼ばれた湊が、すぐに席を立つ。


「13時からの打ち合わせ、資料の最終確認お願い。」


「わかりました。」


短いやり取り。それだけなのに、周囲の何人かが思わず顔を見合わせた。


「また、奴がお供なんだ?」


「和那さん、最近、朝比奈さんをずいぶん買ってますよね?」


「フェスの時は確かに活躍したけど・・・。」


「正直、まだ他の案件じゃ経験不足じゃない?」


小声だった。悪意というより、不思議そうな口調。


その声は、湊の耳に入って来て、資料を抱えたまま、一瞬だけ視線を落とした。


(やっぱり、そう思われるよな・・・。)


自分でもそう思う。フェス案件は音楽という、いわば自分の土俵だった。でも、今回は違う。純粋なビジネス案件だ。以前、和那に大言壮語してしまったのは、当然覚えてはいるが、現実に今の自分が和那の隣に立ってて、本当にいいのか・・・?そう考えない日はなかった。
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