元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
会社へ戻ると


「あ、お帰りなさい。」


「打ち合わせどうでした?」


和那のチ-ムのメンバ-たちが声を掛けて来る。


「うまくまとまったよ。」


和那は資料をデスクへ置きながら答えた。


「朝比奈さんのおかげ。」


その場の空気が、一瞬だけ止まる。


「え?」


誰かが思わず声を漏らした、和那は気付かない。いや、気付いていても気にしない。


「先方が一番迷っていたところを、朝比奈さんが質問一つで引き出してくれたの。私も勉強になった。」


落ち着いた口調だった。特別に持ち上げるわけでもない、事実をそのまま話しているだけ。だからこそ、その言葉には重みがあった。

 
「朝比奈、やるじゃん。」


先輩社員が感心したように頷く。


「知らない間に成長してたんだな。」


「ありがとうございます。」


湊は頭を下げる。それ以上、何も言えなかった。


自席へ戻りながら、胸の奥が熱くなっている。


(みんなの前で・・・南澤さんが、俺を認めてくれた。)


それは初めてのことだった。だから、嬉しかった。湊に胸に、熱いものがこみ上げて来る。そして・・・少しだけ、照れくさかった。一方、和那は課長に打ち合わせの報告を終えると、何事もなかったようにパソコンを開いている。けれど心の中では、小さく笑っていた。
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