元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
昼休み。


湊は一人、給湯室でコーヒーを淹れていた。カップを手に窓際へ立つ、空はよく晴れていた。


(一緒に取った案件・・・。)


和那の言葉が頭から離れない。フェスの時も、それなりに役に立ったと思う。でも、今回は違う。音楽じゃない、ビジネスだ。今の自分を、南澤さんが認めてくれた。


それが何より嬉しくて、思わずひとりでニヤニヤしていると


「こんな所に隠れてた。」


声がして振り返る、和那だった。


「別に隠れてたわけじゃありません。」


「じゃ、何してたのよ?せっかく、お昼一緒に食べようと思ったのに、いつの間にか消えちゃうし。」


ふくれっ面で自分を見て来る上司に


(わざとそういう表情、俺に見せてます?)


と言いたくなるが、当然口に出来るはずもなく


「ちょっとひとりで余韻に浸りたかったんです。」


取り敢えず、本当のところを話してみる。


「そっか・・・。」


ほんの数秒、沈黙が流れる。その沈黙さえ、心地いい。


「朝比奈さん。」


「はい。」


「本当に、お疲れさま。」


和那はそう言って笑った。その笑顔が眩しくて、湊は少しだけ目を伏せる。


「南澤さん。」


「うん?」


「俺。」


一度、言葉が止まる。


「・・・どうやら、この仕事、本当に好きになれそうです。」


「そう。」


和那の答えはそれだけ。でも、浮かべた笑顔は嬉しそうだった。
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