元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
その頃。


和那は、自宅にいた。夕飯の片づけを終え、マグカップにコーヒーを注ぐとリビングへ戻る。


窓の外は、すっかり夜になっていた。


カップを片手にソファに腰を下ろし、スマートフォンの画面に目をやる。


届いているのは、どうでもいい企業メールだけ。ひょっとしたらと期待していた彼からのものはない。


考えてみれば、仕方がない。だって、彼とは仕事の連絡以外、やり取りをしたことがないのだから。そう、今までは、でも・・・。それ以降も、ついスマホに視線を送ってしまう自分がいる。


(何、期待してるんだろう?私・・・。)


自分で自分に呆れて、小さく笑ってしまう。


『なんか、全然話せなくなっちゃいました。』
『ちょっと、寂しいです。』
『また話しませんか、仕事抜きで。』


あんなこと、言われちゃったら、ね・・・。


でも本当に今、彼から連絡が来たら、実は結構困るかもしれない。だって、急にあんなこと言われたって、実際に何を話したらいいかわからない。夕方、不意打ちのように、あんなこと言われて、あの後、まだやることがあったのに、逃げるように帰って来ちゃったのも、「じゃ、これからどこか一緒に行きましょう」なんて言われたら、どう対処していいかわからなかったから・・・。
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