元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「朝比奈さん?」


会社のエントランスから少し離れた街灯の下。申し訳なさそうな顔で立っている湊がそこにいた。


「帰ったんじゃ・・・?」


「・・・帰りました。」


真面目な顔で頷く。


「でも。」


少し照れくさそうに頭をかくと


「このまま今日を終わらせるのは違う気がして。だから・・・引き返してきました。」


一瞬だけ沈黙が流れた。


その沈黙を破ったのは、和那だった。


「ふふっ。」


思わず吹き出してしまったのだ。


「すみません。」


「ううん。」


笑いながら首を振る。


「待ち伏せだね。」


「そう、なりますね。」


湊も困ったように笑った。


その笑顔を見た瞬間、さっきまで胸の中にあった寂しさも、腹立たしさも、いつの間にか消えていた。


(帰ってなかったんだ。)


それでもう、十分だった。


「それで、待っててくれたってことは、そういうことだよね?」


穏やかな笑顔で和那は尋ねる。


湊は小さく息を吸い込んだ、ここから先の言葉を口にするために・・・。


「ちょっと、歩きませんか。」


「うん。」


そう言って、二人は歩き出す。
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