元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「だって、タメ口で話すのに、お互いさん付け呼びって、変でしょ?だから、君も私のこと、好きに呼んでくれていいよ。」


和那はそう言って、いたずらっぽく笑うが


「遠慮しときます。」


即答する湊に


「え~、何で?」


唇を尖らす。


「とにかく行くよ。」


もはや構わず、歩き出そうとする湊に


「えっ、行き先決まってるの?」


尋ねる和那。


「パスタなら、ちょっと心当たりがある。」


ややぶっきらぼうに言うと、湊は歩き出す。


「あ、待って。」


慌てて、後に続く和那に


(いくらなんでも、会社とキャラクタ-変わり過ぎだろ・・・。)


湊は戸惑いを隠せない。でもそんな和那が嫌なわけでも、ない。湊が案内したのは、スクランブル交差点が眼下に見下ろせる、雑居ビルに入っているイタリア料理店だった。


「へぇ、こんな所に、こんなお店が出来たんだ?」


「4年くらい前だったかな?ウチの事務所、この辺にあったから、打ち合わせとか待ち合わせによく使ったんだ。」


「そっか。」


お昼時ではあったが、幸いにも待たされることなく、ふたりはすぐに席に案内された。


「お勧めは?」


メニュ-を手に、和那が尋ねると


「南澤さんは何系が好きなの?」


湊が聞き返す。


「パスタはオールラウンダ-。」


「じゃ、王道のナポリタンなんか、どう?」


「ナポリタンかぁ、もちろん嫌いじゃないけど、せっかくならもうちょっと違ったものに挑戦したいかな?」


「だったら、ここの一番人気のイカスミは?」


「あ、それいい。じゃ、それにする。朝比奈くんは?」


「俺は、ここに来たら、タラスパって決めてる。」


「OK、じゃ決まりだね。すみませ~ん。」


すぐに和那が店員を呼んで、オーダ-は完了。
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